JCOPEのホームページでは、黒潮親潮ウォッチで紹介している図以外に、様々な解析・予測画像を週に2回[1]更新し、公開しています。この解説では、連載「JCOPE2解析・予測画像の見方」の続きで、その解析・予測画像の見方を説明します。
「JCOPE2解析・予測画像(英語)」のページに移動すると(移動方法は「JCOPE2解析・予測画像の見方(1)」参照)、それぞれの日付毎にいくつかの図を見られます。上から順に
- 伊豆諸島周辺の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 東北・太平洋沖の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 北海道東北・太平洋沖の水深100メートルの海水温(等値線・色)
- 黒潮域の水深200メートルの海水温(色)と流れ(矢印)(今回)
- 北西太平洋(JCOPE2計算全領域)の海面水温(色)
- 北西太平洋(JCOPE2計算全領域)の海面高度(等値線・色)
- 東シナ海の海面塩分
です。今回は「4. 黒潮域の水深200メートルの海水温(色)と流れ(矢印)」の解説です。
2017年3月16日の日付を選んで、4番目の図を見ると、図1のような黒潮域の図があります。この図は、毎週解説している黒潮予測で使われている図に似ています。ただし、黒潮予測で使っている図では海面高度(色)と海面近くの流れ(矢印)であるのに対し、図1では水深200mでの温度(色)と水深200mの流れ(矢印)になっています。図の内容は違っていても、黒潮の現状と予測に関してはほぼ同じように使えます。
海面でなく、水深200mの温度が使われているのは、海面だと天候の影響によって温度が上下するのに対し、水深200mだとそのような影響を受けにくく、純粋に海流の影響を見やすいためです[2]。2ヶ月先の天候までは予測が難しいので、天候の影響を受けやすい海水面温度は水深200mの予測よりも難しいという理由もあります。水深200mのもう一つの利点は、水温15℃の等温線の近辺が黒潮の位置になっていることが過去の研究から知られていることです[3]。黒潮より岸側では温度が低く、沖側では温度が高くなっています。図1では、水深200mでも黒潮の強い流れがはっきり見えていることもわかります。
2017年3月17日の黒潮を特徴のひとつは、今週号の予測で解説したように黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路になっていることです。もう一つの特徴は、九州南東の大きめの離岸(小蛇行)が発達していることです。この小蛇行は次第に下流に流されて沿岸でおおきな離岸をもたらすと予測しています。天気予報で低気圧や台風の進行が予測のたびに修正されるように、どのように小蛇行が進行していくかは週2回の海洋予測で更新されていきますので、JCOPEのホームページを活用して注目してみてください。
- [1]2016/12/16号解説参照。↩
- [2]黒潮予測で使われている海面高度も天候の影響を受けにくいです。↩
- [3]川合英夫,1972:黒潮と親潮の海況学.海洋科学基礎講座(海洋物理Ⅱ)P129-320。
気象庁の解説「黒潮」2黒潮の流路の監視(1)診断に用いるデータにも記述があります。
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