2016年の5大ニュース

黒潮親潮ウォッチでは今年も様々なトピックを扱ってきました。黒潮親潮ウォッチの過去の記事一覧はこちら(リンク)で見ることができます。今週は、今年の話題を5大ニュースとして振り返ります。

1) 黒潮流路が大きく変動

この1年、黒潮は離岸流路から接岸流路、接岸流路から離岸流路へと目まぐるしく変化しました。図1は、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での潮位の今年の変化をグラフ作成したものです。八丈島の潮位は、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば高くなり、逆に黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば低くなるので、黒潮流路の良い指標となります(2015/03/20解説参照)。1年の中で、潮位高(接岸流路)と潮位低(離岸流路)の間を変化していることが分かります。特に9月以降は潮位大から潮位小の間を短い期間でいったりきたりしています。今年は急に流路が変化することが多く、黒潮予測は難しい年でした。毎月行っている黒潮予測検証記事はこちら(リンク)です。今年の黒潮の動きについては、新年1月にもまとめて振り返ります。

関連して、黒潮の流路に焦点を当てた、NHK BSプレミア 「池内博之の漂流アドベンチャー 黒潮に乗って奇跡の島へ」、NHK BS プレミア「ワイルドライフ 知られざる伊豆諸島 黒潮・世界最大級の海流が命をつなぐ」 の2番組の制作に協力しました。

Fig1

図1: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」の「各潮位データの図示」から、「期間: 2016年までの 1年間」で、「八丈島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

2) 引き続き親潮が弱い

親潮域に暖水が居座り、親潮の勢力が弱い現象は昨年5月に始まり(親潮ウォッチ2015/5)、親潮ウォッチで見てきたように今年も続いています。「親潮のこの一年をアニメーションで」(親潮ウォッチ2016/05)では2015年3月1日から2016年5月7日までのJCOPE2再解析によるアニメーションを、「気象衛星「ひまわり8号」で見た親潮 (親潮ウォッチ2016/06)」では2016年4月1日から6月11日までのJCOPE2再解析と気象衛星「ひまわり」によるアニメーションを見ました。今年の親潮については、来年1月にも、まとめて振り返ります。

今年は黒潮の続きである黒潮続流が不安定で、親潮域と黒潮域との間である混合水域に多くの暖水渦が見られたのも特徴です(「暴れる黒潮続流」(親潮ウォッチ2016/07))。

北海道南東沖に居座っていた暖水塊には解消に向かっていますが(「暖水渦に変化のきざし?」(親潮ウォッチ2016/10))、東北沖の暖水塊が北上しており、今月の親潮ウォッチによれば、弱い親潮はまだしばらく続きそうです。

親潮や混合域の状態はサンマをはじめとして漁業にも影響を与えていると考えられます。今後も月一回の親潮ウォッチにご注目ください。

3) 異例の台風

今年の台風は、異例づくめでした。台風1号の発生が遅れたかと思えば(※1)、8月に北海道に立て続けに上陸し、台風10号は統計開始以来初めて東北地方太平洋側に上陸した台風となり(※2)、各地に大きな被害が発生しました(※3)。これらの台風の中から「台風通過する」(親潮ウォッチ2016/09)では、台風5・6・7・9・10・11号の通過にともなう海面水温変化のアニメーションを作成しました。

関連して、NHKクローズアップ現代+「台風“異変” 迫る脅威」 「“常識”が通用しない!?~徹底検証・台風“異変”~」の2番組でJCOPEのデータが使われました。

異例という訳ではないですが、「ちきゅう」のための海流予測(下のニュース5)の実施中に「ちきゅう」の近くを台風が通過し(2016/9/23号)、台風の海流への影響が観測でも見られた(2016/9/30号2016/10/7号)のは印象的な出来事でした。

4) JCOPE2からJCOPE2Mへ

2016年10月14日号の予測から、JCOPE2の改良版であるJCOPE2Mによる予測が始まりました。

JCOPE2Mの改良点は多岐にわたりますが、特に気象衛星「ひまわり」の観測する海面水温がうまく取り入れられるようになっています(2016/11/28号黒潮予測検証参照)。また、JCOPE2では九州南東の離岸が大きく予測しすぎるという問題を抱えていましたが(2016/11/1号黒潮予測検証参照)、JCOPE2Mではそれが無くなりました。JCOPE2Mになって、週2回の予測更新も始まっています(「JCOPE2Mによる予測が週2回に!」)。

JAMSTECアプリケーションラボの海洋・大気環境変動予測応用グループ(JCOPEを開発しているグループ)では、オオミズナギドリや貨物船からの観測データの取り入れ(6月18日・公開セミナー「オオミズナギドリと貨物船で海流を測る)、宿毛湾を対象とした水平分解能200mの超高分解能モデル(宿毛湾の海を活かしたまちづくりレポート1レポート2)、海洋酸性化予測(進む海洋酸性化)、他(次のニュース5も参照)、様々な開発に取り組んでいます。

5)「ちきゅう」のための海流予測を実施

JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」の航海時に、海流予測を実施しました。黒潮親潮ウォッチでは、熊野灘沖第365次航海室戸沖第370次航海の2回、「ちきゅう」のための海洋予測連載を行いました(※4)。「ちきゅう」作業中に刻々と変わる海流、黒潮を避けるための移動の繰り返し、支援船の協力など、「ちきゅう」航海のあまり知られていない一面を伝えられたと思います。

海洋中の一点に過ぎない掘削地点の流速を予測するのは非常に難しい挑戦です。そこで、熊野灘沖第365次航海では、新開発のアンサンブル予測KFSJを投入しました。この予測では、ほんの少しずつ変化をつけた「並行世界」(アンサンブル)を用意します。それにより流速の変化の可能性を幅を持って予測することができます。一方、室戸沖第370次航海では、風などによる急な変化を捉えるのに適した予測モデルJCOPE-T-JCWとJCOPE-T-EASを投入しました。予測実施中に得られた経験は今後の予測研究に活かしていきます。

関連して、「ちきゅう」も含めたJAMSTECの異なる部署で個々に取り扱っていたデータを組み合わせた全く新しい海洋観測体制の可能性を話し合った、「ちきゅう」夏合宿について紹介しました(「ちきゅう」夏合宿)。

 


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※1 参照:JAMSTECコラム:2016年における台風発生時期の遅れ (2016年8月12日、ビッグデータ活用予測プロジェクトチーム極端現象全球予測研究ユニット/山田 洋平ポストドクトラル研究員・中野満寿男特任技術研究員・小玉知央ユニットリーダー)

※2 参照 「2016年(平成28年)の台風について」(気象庁 2016/12/21)

※3 参照:「台風第7号、第11号、第9号、第10号及び前線による大雨・暴風 平成28(2016)年8月16日~8月31日(速報)」(気象庁、2016/9/6日)

※4 黒潮親潮ウォッチでは取り上げていませんが、「沖縄トラフ熱水性堆積物掘削Ⅲ」航海(11月16日~12月15日)の時も海流予測を実施しました。