研究プラットフォーム運用部門
Institute for Marine-Earth Exploration and Engineering (MarE3)

紅海において初めてのKAUST-JAMSTEC共同研究航海を実施!

2022年8月10日

ニュース

サウジアラビア・アブドラ王立科学技術大学(King Abdullah University of Science and Technology:KAUST)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、両者間で締結されたMOUの一環として、今年2月にR/V Thuwalを用いて、初めて研究航海を実施しました。この航海では、紅海Al Wajh沿岸域の南にある水深の浅いサンゴ礁群について、堆積学、生物学、海洋学的な観点から調査を行いました。特に、紅海ではあまり注目されていない海面下200m以深の中有光層(メソフォティックゾーン)としている海域に焦点を当てて実施しました。

本航海は、COVID-19の影響によりJAMSTECの研究者が乗船できなかったため、首席研究者(Chief scientist)を務めたAlex Petrovic氏を含むKAUSTの研究者7名が乗船し、試料採取などを実施しました。乗船研究者はマルチビーム音響装置を用いて海底地形調査を行った後、4Kカメラを搭載したKAUSTのROV Falconを用いて、中層および底生生物群集を詳細に調査しました。さらに、底生動物の幼生群集とその捕食者、また調査海域の水塊の物理的・化学的な変動を調べるために、海水・微生物・堆積物サンプルを水深700mまで採取しました。

乗船研究者であるThomas Finkbeiner氏は「この研究航海は単なる科学的な調査だけではなく、日本の共同研究者たちとの重要な研究基盤を築くものです。研究航海で得られた経験と成果は、将来的にJAMSTEC研究船を用いた紅海の調査導入への重要な足かけとなるでしょう。」と述べています。

採取した試料は、JAMSTECとKAUSTの研究者らによって今後詳細に分析される予定です。具体的には、海水試料はJAMSTEC 地球環境部門の脇田昌秀氏、内田裕氏によって分析され、撮影した映像はKAUST Red Sea Research CenterのSilvia Vimercati氏、Eloise Richardson氏とJAMSTEC 超先鋭研究開発部門のPhugal Lindsay氏、Davier Montenegro氏、Mehul Naresh氏らによって解析されます。Dhugal Lindsay氏の研究チームは更にプランクトン試料の分析も行い、底生生物群集(特に幼生)とその捕食者の特徴の解明に取り組む予定です。また、研究対象域の生態系をより明らかにするため、KAUSTのHildegard Westphal氏、Marlena Joppien氏が堆積物試料の分析を、Fabio Marchese氏、Alex Petrovic氏によって地形学的分析を行う予定です。これらの共同研究によって更なる研究成果が得られることが期待されます。

この研究航海を実施するにあたり、RSRCのUte Langner氏とVincent Sardene氏、Coastal & Marine Resources Core Lab Servicesの技術者、R/V Thuwalの船長Yuriy Brocka氏とその乗組員には多大な支援をしていただき感謝申し上げます。また、この航海は日本政府経済産業省(METI)の助成金を受けて実施しました。

写真1. R/V Thuwalに乗船したKAUSTの研究者チーム。左から、Ute Langner氏(海洋生物学), Hildegard Westphal氏(堆積学), Silvia Vimercati氏(サンゴ礁学), Eloise Richardson氏 (魚類学), Marlena Joppien氏(炭酸塩堆積学), Dominik Nommensen氏(堆積学), Alexander Petrovic氏(首席研究者).

写真2. JAMSTECの研究者チーム。左:Dhugal Lindsay氏 (プランクトン学), 中央:Mehul Naresh Sangekar氏 (ロボット光学), 右:内田 裕 氏(左、海洋物理学)、脇田 昌英 氏 (右、海洋化学).


写真3. 海水の採水および水温・塩分観測に向けた船上での準備の様子(撮影者:Ute Langner氏)

写真4. 航海で使用されたKAUST所有のROV Falcon。JAMSTEC所有の4kカメラ(写真右下、黄色線で囲われた部分)を搭載(撮影者:Ute Langner氏)