【目次】
▶ 断層面の摩擦熔融
▶ 室内で断層すべりを再現する摩擦熔融実験
▶ 石英が、従来の考えより低温で熔融
▶ 実験結果が示す新たな課題
実験データと試料分析から、石英が1,350~1,500°Cで融けていたことがわかりました。これまで石英(シリカ)の融点は1,726°Cとされてきましたが、摩擦熔融実験では220~370°C低温で融けたことになります。
石英が従来の考えよりも低温で融けたことは、従来の考えよりも石英が融けやすいことを意味します。それは、予想より小さな断層すべりでも石英が融けて、断層をすべりやすくする(断層の強度を低くする)ということです。解析から、その断層のすべり抵抗は通常の半分以下になるとわかりました。
たとえば同じ量の氷を水に溶かすとき、大きな塊より細かい氷の方が早く溶けますね。これは、細かい氷の方が表面積が大きいために水と接する面積が大きく溶けやすくなるためです(図3)。
今回の摩擦熔融実験で破壊された石英は数10~100nm(nm=1/1,000,000,000m)まで細かくなっていました(写真9)。髪の毛の太さの1/1,000に相当するような、想像しづらい細かさです。石英が細粒化して表面積が大きくなったことで、より低温で融ける石英の状態に変化したため、従来の融点よりも低温で融けたものと考えます。
ここで重要なのは、“断層すべりだから”、石英がここまで細粒化して融けやすくなる現象が起きた、ということです。たとえばハンマーで石英をどんなに砕いても、ここまで小さくなりません。