【目次】
▶ 大気と海は常にCO2を交換
▶ 詳細が不明だった北極海のCO2吸収量
▶ カギは、クロロフィルデータの追加
▶ 面積は小さいのに、たくさんCO2を吸収
▶ 安中さんは、できたての制度で走ってきた研究者!
北極海は水温が低いためCO2がとけやすく、また植物プランクトンがCO2を使って活発に光合成しています。そのため北極海はCO2を吸収するとみなされています。そして、地球温暖化に伴い海氷が減少し、それまで海氷に覆われていた海面が露出するようになりました(図3)。
図3 9月1日の海氷。白い部分が2017年の海氷。線は、1980年代平均、1990年代平均、2000年代平均の海氷の縁を示す。(国立極地研究所 北極域データアーカイブシステムによる提供)
海氷減少に伴いCO2の吸収量が増加した可能性が指摘されました。ところが北極海は観測が困難で観測データが少なく、いつどこでどのくらいのCO2が吸収されているのか、よくわかっていませんでした。また、北極海全体の吸収量も、限られた海域での吸収量に面積比をかけた見積もりや、他の領域で見積もった値を積み上げて逆解析のように求める“間接的な見積もり”にとどまっていました。すなわち、北極海のCO2吸収量の詳細は不明だったのです。
そこで私たちは、北極海のCO2吸収量を“直接”見積もり定量化することを目指しました。