【目次】
▶ 海底泥火山の深部では、微生物は活動している?
▶ 第五泥火山を掘削
▶ 地球の活動が作り出す“メタン菌の巣”
▶ メタン生成の場を突き止めたことが、今後に続く
第五泥火山とは紀伊半島熊野灘沖水深約2,000mの熊野前弧海盆にある泥火山(動画2)で、直径約1㎞、海底面からの高さ約150mです。
熊野前弧海盆の南東には南海トラフがあり、大陸プレートの下に海洋プレートが沈みこんできています(図3)。
第五泥火山はメタンの放出があり活発に活動していると思われたからです。この周辺では、過去の有人潜水調査船「しんかい6500」による潜航調査でシロウリガイが多く観察されました(動画3)。シロウリガイは、メタンが分解されて生じる硫化水素を利用します。これが生息するということはメタンの放出を意味します。また、紀伊半島沖で発生した地震後には、第五泥火山周辺でメタン濃度が高くなっていました。さらに、2006年に第五泥火山表層で採取したコア試料の化学分析から、水素と二酸化炭素を使ってメタンや酢酸を作っている微生物がいるかもしれないことが判明しました。
そこで、泥火山から試料を採取するため、2009年と2012年に地球深部探査船「ちきゅう」で山頂付近を掘削しました。ねっとりとした泥火山の掘削は困難でしたが、2012年は海底下200mまで掘削し、一部はハイブリッド保圧コアシステムを使ったコア採取にも成功しました。保圧コアシステムとは海底下の現場の圧力を保持し低温のままコアを取り出す装置です。海底下は深くなるにつれて圧力が高くなるため、そこからコアを引き上げてくれば、圧力の低下に伴いコアに含まれていたガスや液体が抜けてしまいます。しかし保圧コアシステムを使えばその問題をクリアできます。ハイブリッド保圧コアシステムはこの保圧コアシステムを「ちきゅう」用に改良したもので、この掘削では山頂部表層と深さ60mで試料を採取しました(動画4、5、図4)。