【目次】
▶ 海底資源として期待される熱水鉱床
▶ 初のAUV2機同時運用による海底下構造調査
▶ 2機の距離を一定に保つのが大変
▶ “AUVを開発するチーム”と“AUVで観測研究するチーム”が一緒に技術開発
笠谷:曳航体でケーブルを引いて送信受信するのはメリットもある一方、オペレーションが大変なので、2つに分かれたら良いな、という発想だけは2011年ごろからありました。同様の研究をしている京大の後藤先生と検討していたことを覚えています。
しかし当時JAMSTECが持っていたAUVは、深海巡航探査機「うらしま」の1機のみ。2機使うなんて10年は実現できないと思っていました。まあ片方がAUVで、もう片方は曳航体の形式が現実的か、などと後藤先生と話してたことを思い出します。
鈴木:「これはすごい」と直感しました。海洋鉱物資源を探す最もシンプル且つ有効な手法だと。また、鉱体で生じる化学反応を利用することから自分が専門とする化学ともリンクして、本当の意味で一緒に仕事ができると魅力を感じました。
その一方で、正直に言えば、AUVは1機の運用でも大変だと聞いていたので、同時に2機なんて「そんなあほな」とも思いました。
鈴木:そんな状況を大きく変えたのが、先ほど話したSIPの「海のジパング計画」です。AUVを開発する「AUV複数機システム開発ユニット」チームと、AUVで観測研究する「成因研究ユニット」が、海洋鉱物資源を探す技術を開発するという同じ目的のもとで一緒に計画を進めることになりました。これが技術を大きく進展させる原動力となったのです。
笠谷:AUVに取り付けるロッドの検討、送信機受信機の小型化、AUVの海域試験など開発を地道に積み重ねていきました。
鈴木:「いるかとじんべいのおっかけっこ」でしょうか。そんな様子を思い浮かべると、この話を聞いた子どもたちもイメージを持っていただけるかなと思います。
笠谷:2機のAUVの距離を人間が制御するのではなく、AUV同士が互いの距離を把握して、ある程度の自動化を図る装置を開発する必要があります。また、「ゆめいるか」からのノイズがありそうですので、観測データの質を上げるための検討をします。
笠谷:日本がリッチになることに直結するとは思い難いです。ただ、こういう手法を確立し、海底に資源があると言うカードを日本が持っていることは大切です。そういう意味では、資源分布をきちんと把握して国益にできるとは思います。
鈴木:現在は、観測をしても実際のところは海底を掘らないとわからない部分があります。そこで、海底を再現した室内実験を積み重ねて、鉱体がどのような状態の時にどのような電気信号を発するのか傾向を明らかにして、観測から鉱体の成熟具合や厚みなども推測できるようにしたいです。観測データと実際のモノを結び付けたいと考えています。それは、化学屋である私の仕事だと思っています。
笠谷:夢ではありますが、送信側のAUV1機に対して、受信側のAUVを複数にして海底下構造調査をしたいです。より調査の効率も上がります。