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話題の研究 謎解き解説

海洋大循環に重要な南極底層水の体積が減少

【目次】
重い海水の生成が駆動力となる海洋大循環
アデリー/ジョージ五世ランド沖の深層を世界で初めて観測したDeep NINJA
南極底層水の急速な減少
解析はうまくいかない、でもプレッシャーはめいっぱい!

アデリー/ジョージ五世ランド沖の深層を世界で初めて観測したDeep NINJA

どのようなデータを解析したのですか?

深海用プロファイリングフロート「Deep NINJA」(図3)などが観測したデータを解析しました。


図3 Deep NINJAとその内部構造

Deep NINJAは、我々が鶴見精機さんと共同で開発したフロートです。水深4,000mまでの水温、塩分、圧力(水深)を観測します(動画1、2)。

動画1 Deep NINJAの海中の動き。ふだんは水深2,000mを漂うが、決められた期間(10日から1か月)ごとに1回、4,000mまで下降し、水温、塩分、圧力(水深)を観測しながら海面まで浮上します。そして観測データと位置情報を通信衛星によりリアルタイムで地上局に送信し、再び海中にもどって漂います。


動画2 投入の様子の一例(2017年北太平洋(本研究ではありません))

従来のフロートでは水深2,000mまでの観測に限られていましたが、Deep NINJAの誕生により、水深4,000mまでの深海の観測が可能になりました。Deep NINJAは冬には海氷に覆われてしまう南極海の通年観測も可能です。海氷との接触を避けるために、観測しながら上昇する時に水温の情報からフロートの真上に海氷の存在を予測すると、海面でのデータ通信をせずに海中に戻るようにプログラミングしてあります。2012年12月から2014年8月までの約20ヶ月間、世界で初めて、アデリー/ジョージ五世ランド沖を深層まで連続的に観測しました。

今回は、Deep NINJAの観測データに加えて、Deep NINJAを投入した海洋地球研究船「みらい」(動画3)で観測したデータや1930年以降の歴史的観測データを解析し、アデリー/ジョージ五世ランド沖について研究しました。(図4)


動画3 海洋地球研究船「みらい」

図4 観測地点。左 Deep NINJAと「みらい」 右:歴史的観測データ。