小さな島国日本は、現在では資源のほとんどを輸入に頼っています。しかし海に目を向ければ、世界第6位の面積をもつ日本の排他的経済水域には貴重な鉱物資源が眠っています。それらを効率よく探すための技術開発が、このたび大きく前進しました。
AUV複数基運用による海底下構造調査に初めて成功
~海底熱水鉱床などの海洋鉱物資源の高効率な調査方法に向けて~
「次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム」の鈴木勝彦ユニットリーダーと笠谷貴史主任技術研究員にお話を聞きます。
【目次】
▶ 海底資源として期待される熱水鉱床
▶ 初のAUV2機同時運用による海底下構造調査
▶ 2機の距離を一定に保つのが大変
▶ “AUVを開発するチーム”と“AUVで観測研究するチーム”が一緒に技術開発
鈴木:私は、海底資源の形成過程や濃集メカニズムなど地球の歴史上で起きてきたことを、化学の力を使って解明する研究をしています。今回はユニットリーダーとして、海底下構造調査を行ったこの研究航海の予算確保から計画、関係者との調整などをしました。
笠谷:私は、直接見ることのできない海底下構造を可視化する物理探査手法と機器の開発と、それを用いた様々な研究をしています。今回は研究航海に首席研究者として乗船し、調査航海全体の指揮を執りました。
鈴木:熱水鉱床は、300°Cを超える熱水が海底から噴き出して周囲の海水で冷却された際に鉱物が沈殿して作られます。その鉱物は多くが硫化物(硫黄と金属の化合物)で、そこには金、銀、銅、鉛、亜鉛などが含まれることが多くあります。
鈴木:熱水鉱床は世界中の海底で発見されていますが、環太平洋火山帯に属する日本周辺海域は世界のどの海域よりも濃集していると言われます。
笠谷:海洋鉱物資源の調査には様々ありますが、最も基本的なのが「電磁気学に基づいた調査手法」です。電気を通しやすいなどの鉱物の性質を利用します。現在は、研究船から曳航体を海底近くまで降ろして約200mのケーブルをひきながら、ケーブルの曳航体に近い側で電気を送信、遠い側で受信して、海底下の電気の流れやすさの違いから海底下構造を検出します。曳航体は、ケーブルで船と繋がっているため、リアルタイムで観測データを確認できたり、大きな電流を流せるなどのメリットがあります。しかし、長いケーブルを引っ張っていることから、あまり速く水中を航走できない、観測測線を変える際に時間がかかるなどの課題があります。急峻な地形に対応するもの大変です。
笠谷:こうした課題を解決するのが、今回我々が成功したAUV2機を用いた調査手法です。