【目次】
▶ スーパークリーンルーム
▶ 超高精度分析機器による微小領域研究
▶ 極微小領域分析室
▶ 微細組織構造解析室
畠中:大丈夫、小さな試料を見ることに特化したラボがあります。高解像度質量分析スペシャリストの伊藤元雄さんに話を聞きましょう!
伊藤:この先にある極微小領域分析室と微細組織構造解析室は、小さなものを見るために構築した世界でもまれなラボです(写真4)。
伊藤:もっともっと小さい。マイクロメートル(μm)やナノメートル(nm)の領域です。たとえば髪の毛の太さが100μm。その10万分の1です(図4)。
伊藤:このラボでは、まず試料全体をスクリーニングして、「ここだ!」という部分を集束イオンビーム装置(FIB)で切り出します。そして、原子分解能透過電子顕微鏡(TEM)で組織や構造を見ます。続いて、超高空間分解能操作型二次イオン質量分析装置(NanoSIMS)を用いて、その物質に含まれる微量元素や同位体の分布を可視化します(図5)。同位体とは、同じ元素でも質量数が異なるものを指します(図6)。
伊藤:こうした機器が個別にある機関は他にもありますが、コア研のように分析のリンケージを考えてベストの機器を1か所にそろえたラボは、非常に珍しいと言えます。
たとえばコア試料に含まれる微細・微小な鉱物、微生物の構造や、その物質をつくる微量元素濃度や同位体比を見ます。同位体比は、その物質がどこから来たのか、どんな環境条件や生命活動でつくられたかによって異なるので、当時の環境を推定するのに役立ちます。また、諸野さんが取り出し培養した微生物に、13C炭素で印をつけた栄養分(グルコース、 酢酸)などを与えて、取りこまれる量と速さを調べ、微生物が生きていることを明らかにしたこともあります(2011年10月11日発表)。
他にも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星粒子や、掘削で得られた鉱物試料に含まれるメルト包有物の分析に代表されるような地球惑星化学に関する研究も精力的に行っています。最近では企業からの依頼分析も増えてきており、ナノスケールの分析を要求される最先端材料物質がほとんどです。研究者の実験アプローチやデータの解釈は、企業からみると新しい場合が多々あるので、イノベーション創出という観点から考えると非常に有益なことがあるみたいですね。そして僕らにとっても企業の開発スピード感や最先端マテリアルを勉強できますので、お互いに得るものが多いと考えています。