【目次】
▶ 一生で数千㎞を回遊するウナギ
▶ JCOPE2で海流を再現し、ウナギに見立てた粒子の挙動を解析
▶ 日本や台湾にたどり着くシラスウナギが減少
▶ 原因のひとつは、海流変動
▶ 人に興味を持ってもらえる新発見をしたい
シミュレーションで、海流モデル「JCOPE2」(Japan coastal Ocean Predictability Experiment2、図3)で過去の海流を再現して、ウナギに見立てた粒子がマリアナで産卵されてから日本や台湾にたどり着くまでを解析しました。
JCOPE2とは、北西太平洋の黒潮・黒潮続流、親潮、中規模渦などの変動を見るためにJAMSTECが開発した海流予測モデルです。観測データをモデルに取り込み融合することで、精度良く過去の海況を再現し、また海況予測も可能とします。これまでに黒潮大蛇行の予測や船舶の燃費節減に役立てられるなど確かな実績を誇ります。私自身もJCOPE2を使って研究していて、その再現性の高さには信頼を寄せていました。
そのJCOPE2に、私がつくったシラスウナギの動きを再現するプログラムを組み込みました。ポイントは、シラスウナギの水平・鉛直方向の運動(図4)を再現したことです。ウナギは成長とともに泳ぐようになり、敵に食べられないように昼間は200mくらいの深さへ、夜間は浅海へ浮上するなど水平方向にも鉛直方向にも動きます。こうしたウナギの水平・鉛直方向の動きは再現するのが大変なのです。
こうして1993年から2013年までの海流を再現し、毎年5月から7月に1万8000個の卵が孵化すると仮定して、回遊を経て東アジアにたどり着くまでを年ごとにシミュレーションしました。