【目次】
▶ 一生で数千㎞を回遊するウナギ
▶ JCOPE2で海流を再現し、ウナギに見立てた粒子の挙動を解析
▶ 日本や台湾にたどり着くシラスウナギが減少
▶ 原因のひとつは、海流変動
▶ 人に興味を持ってもらえる新発見をしたい
シミュレーションで毎年同じ数の卵を孵化させているのに日本や台湾にたどり着く数が減るということは、海流に何か起きているということ。そこで海流の解析を進めると、北赤道海流に原因があることがわかってきました。
そうです。北赤道海流は、上空を吹く時計回りの風と、南側に吹く反時計回りの風によって駆動されています(図6)。流れの向きは平均的には西向きですが、その中には南北方向へもあります。
解析期間の最初の5年(1993年~1997年)と最後の5年(2009~2013年)を比較すると(図7)、北赤道海流の西向きの流れが弱くなっていました。同時に、表層から深さ約50mにかけて北向きの流れが弱くなり、50m~250mの深さにかけては南向きの流れが強くなっていたのです。
その50~250mという深さは、ちょうどプレレプトセファルスやレプトセファルスが生息するあたりです。つまりちょうど南向きの流れが強くなっている水深にプレレプトセファルスやレプトセファルスがいるために、物理的に北上しにくくなっているのです。
上空を吹く北側と南側の風が弱くなったためです。しかし、なぜ風が弱くなったのかはわかりません。地球温暖化の影響という人もいれば、数十年変動だという人もいます。
それはまだわかりません。北赤道海流がこのまま弱まり続けるのか、元の状態にもどるか。現状ではまだわからないのです。
また、実際の漁獲量の減少の原因には、人間による漁獲、マリアナ諸島沖(産卵海域)に戻る親ウナギの数、それらの産卵量、餌となるプランクトンなどの影響もあります。ウナギの資源量変動には、解明するべき謎が数多く残されているのです。今後は、そうしたパラメータをモデルに加え、精度を高めていきたいと考えています。