20220318
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トピックス:コラム

3月16日夜に発生した福島県沖の地震
―11年も続く東北地方太平洋沖地震の影響―

2022年 3月 18日
海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター
山本 揚二朗 副主任研究員
有吉 慶介 グループリーダー

どのような地震だったのか

2022年3月16日夜、福島県沖でマグニチュード7.4(気象庁暫定値:深さ57km)の地震が発生しました1,2)。最大震度6強を観測し、死傷者や建築物の倒壊などといった被害が発生しています。お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

地震調査委員会による検討の結果、今回の地震は西北西―東南東に圧縮軸をもつ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した地震と結論づけられました3)。太平洋プレート内部で発生したマグニチュード7以上の地震は、2011年4月7日に発生したマグニチュード7.2の宮城県沖の地震、2021年2月16日に発生したマグニチュード7.3の福島県沖の地震4,5)(以下、2021年地震)以来3個目です(図1)。今回の地震の震源は、2021年地震の南西約8kmに位置し、深さは2km深く推定されています。

図1

図1.東北地方太平洋沖地震の余震域7)(緑枠)と、本震以降に領域内で発生したマグニチュード7以上の地震の震央分布。地震の深さをカラーで示し、今回の地震は赤丸で表示。背景のカラーは東北地方太平洋沖地震時の断層すべり量10)。黒線は海溝軸の位置11)

福島県沖の被害地震

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下、東北地震と表記)以降に福島県沖で発生した地震のうち、実際に被害を及ぼした地震の震央分布6)と、今回の地震を比較してみます(図2)。今回の地震(図2赤丸)は,この中ではマグニチュードが2016年11月22日の地震(図2青丸、以下2016年地震)と同じで最も大きい(マグニチュード7.4)地震でした。また、最大震度でみても、2021年地震(図2黄丸)と同じで最も大きい(震度6強)地震1,6,7)となりました。

なお、これら過去の地震について気象庁は、今回の地震を東北地震の余震と考えられると発表していますが3)、今回の地震については同様の表現はありませんでした。これは、2021年4月1日以降、気象庁が発表形式を変更したことによるものであり、今回の地震も東北地震の余震域内7)において発生したものです。

図2

図2.東北地方太平洋沖地震以降に福島県沖で発生し、被害を及ぼした地震6)の震央分布。今回の地震を赤丸、プレート境界地震を青丸、津波を伴った地震を黄色丸、その他を灰色丸で表示。黒線は、図3に示す断面図の位置。

地震の発生位置と震度・マグニチュード

これらの被害地震について、宮城県沖・福島県沖における沈み込む太平洋プレートの地殻と最上部マントルの3次元地震波速度構造イメージングの結果8)に重ねて示します(図3)。今回の地震はプレート境界面9)から10kmほど深い場所、最上部マントル付近に位置し、2021年地震(図3黄丸)と同じく沈み込むプレート内で発生したとする、地震調査委員会による判定結果と調和的です(図3赤丸)。

今回の地震では、2021年地震に比べてより広範囲で震度6弱以上の大きい震度を観測しました。両者のマグニチュードの差はたったの0.1ですが、マグニチュードが0.1増える毎に、地震のエネルギーは約1.4倍になります。今回の地震は2021年地震の約1.4倍の規模だったため、より広範囲で強い揺れを観測しました。一方、今回の地震と同じマグニチュードであった2016年地震は、最大計測震度は5弱にとどまっていますが、陸側プレート内で発生しており(図3青丸)、144cmの津波を伴いました6)。このように、地震の発生位置とマグニチュードを正確に推定することは、地震による地面の揺れや津波に備える上で重要な役割を果たしています。

図2

図3.図2の黒線に沿ったP波速度構造断面8)とプレート境界9)、および被害地震6)の分布。