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21 Nov. 2011: Mirai
11月20日(日)[定点21日目]「見えないものを観るために」
乗船研究者は各々が各々の科学目的を持っている。そんな研究者が、船上という空間で出会って情報交換をするうちに、お互いの興味対象が重なったり、能力が補完できたりすることに気づくと、時折「共同観測研究」が行われることがある。今回はその一例をご紹介。
一方の観測機器はライダー。レーザーを真上に発射し、反射された光を測定することで、雲やエアロゾルの数、形などの鉛直分布を調べる。今回の航海では2種類のライダーが持ち込まれ、精度も格段にアップ。今回の乗船研究者は「みらい」での観測経験がもう10年以上の方だが、今回の観測精度には思わず笑顔がこぼれる程の出来栄えの様子。
もう一方の観測機器は、水蒸気ゾンデ。対流圏上部?成層圏のような水蒸気量の極めて少ない場所で、その僅かな量の違いを高精度測定することを可能にする測器。今回船上での運用は初めてで、Leg-2になってようやく思うような観測が出来てきた。
そんな彼らの共通の琴線に触れたのは「見えない巻雲」と呼ばれる極めて薄い超高層の雲。その存在自体は知られているものの、その詳細についてはまだまだ謎の部分が多い。これがどうやら、ライダーと水蒸気ゾンデ、両方の観測結果から見えているらしい、という話になったのがここ数日。ライダーは雲の存在を測れるし、水蒸気ゾンデは雲の原料である水蒸気の分布を測れる。この「見えない雲」がどう出現して消滅するのかが複数の測器で観測できれば画期的だ。
果たして両者の強化観測は数日前からスタートし、今日も続いている。結果をお知らせするにはデータの慎重な検討が必要だが、どうやら良いデータがとれているようだ。
ライダーは自動測器だが、熟練研究員の毎日のメンテナンスが高精度の観測データをもたらす。水蒸気ゾンデは1回の観測の為に早朝から機器調整を行なう。こうして日々向上する観測精度と、「みらい」という船での未踏の地へのアプローチ、そして船上での出会いが、新事実を捉える可能性を広げている。
写真: 左下から時計回りに
(左下) 絶好調のライダーと、それを支える研究員のMさん。
(左上) 夜になると、ライダーのレーザーが天空へ伸びるのが見える。今回の「みらい」船上では2台のライダーが稼働中。
(右上) 水蒸気ゾンデの放球。繊細な機器のため非常に慎重な扱いが要求される。
(右下) 水蒸気ゾンデのデータを一心にみつめる担当の研究員。