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24 Nov. 2011: Mirai
11月24日(木)[定点25日目]「決断」
乗船研究者にとっての目的は様々だ。定点での観測終了が迫ってきた中、目的達成の為に各自が努力を続けている。
ウミアメンボの研究の為に乗船している彼らは、ウミアメンボを採取し、その環境条件への耐性を船上で調べている。その実験の結果が間違っていない、と統計的に言えるだけのサンプル数が必要なのだが、今航海は1日あたりの採取サンプル数が10頭前後と少なめ。予定した最終日を前にして、必要なサンプルはあと30頭。
各方面との交渉の末、最終日でも十分なサンプル数に達しなかった場合にプラス1日の観測実行追加の了承をとりつけた。しかし最初に各部署と合意した計画の変更は、当初予定を前提として物事を進めてきた各部署に多少なりとも負荷をかけることになる。出来るならば、計画通りで終わらせたい。
そして本日。
数人の見学者(含むコアなファン)が見守る中で、いつものようにサンプリングがスタート。サンプリングのチャンスは、3回。15分間の待ち時間ののち、1回目が上がってくる。カウントすると、10頭。このペースなら、今日だけで十分だ。
2回目も10頭を採取することができると、皆の中に緊張感と寂寥感が漂う。沢山のサンプルがあった方が実験には望ましい。でも、今日で終わってしまうことに対する一抹の寂しさもある。
果たして3回目。
担当研究者のピンセットは、11頭のアメンボをつまみ上げた。
実験にはギリギリの数だ。実験までに死んでしまう個体もあるかもしれない。でも彼はそのリスクを鑑みた上で、宣言した。
「明日は、なしです。今日で終わりにします」
観測をしていると段々贅沢になってくる。取れるものは可能な限り取っておきたい、誰もがそう考える。しかし当然ながら時間、機材、人繰りなどには限界があり、それを鑑みた実行と終了の決断が観測実行には重要だ。冷静さと勇気をもっての決断に、筆者は敬意を表したい。
写真: 左上から時計回りに
(左上) アメンボ採取の為のネットを曳行中。先端(右下)にサンプルが溜まる。
(右上) ネットを見守る研究者と船員。
(右下) ネットを揚げた後、サンプルを透明容器に移す。
(左下) 透明容器からウミアメンボを採取。
(中央) 採取されたウミアメンボの1頭。