「北極域研究船の建造状況」
2022年7月1日
研究プラットフォーム運用開発部門 北極域研究船推進室 建造チーム
ここでは、北極域研究船の建造状況を紹介して参ります。不定期の更新になりますが、少しでも皆様に現況をお伝えできれば幸いです。拙い文章については何卒ご容赦を。
さて、船舶の建造はJAMSTECにとって数年に一度あるかないかの大仕事です。船舶の建造に常時携わるような専門の職員はいないため、その都度、大なり小なり外部からの協力を得て臨みます。
北極域研究船(以下「本船」といいます。)では、以下の三者を中心に建造の実務を進めることとなりました。
- 「船主」としてJAMSTEC
- 「建造監理者」として株式会社商船三井(MOL)殿(MOLグループの皆様を含む)
- 「造船所」としてジャパン マリンユナイテッド株式会社(JMU)殿
船主の意向を受けて、建造監理者が全体の進捗管理や調整を行い、造船所が実際に船として仕上げていくという関係ですね。
本船の建造が始まって10ヶ月ほどが経過しました。今どこまでできたかというと…
まだ影も形もありません!
あるのは側面図と各甲板(船でいう階、フロア)の平面図だけです。
鉄を切って繋げて組み上げていく前に、色々とやらなければいけないことがあるのです。
2020年度までに本船の基本的な仕様の検討が済み、“建造基本仕様書”に必要な機能や大まかなスペックはまとめられました。
しかし、その内容だけでは船舶、特に研究船などは造れません。使い勝手を踏まえた具体的な機器の設置場所や乗船者の動線確認、安全安心な運用を見据えたシステムの詳細設定などなど、更に細かい内容を詰める必要があります。
船主、建造監理者、造船所の三者がより良い研究船の実現を目指し、現在進行形であーでもないこーでもないと協議を重ねています。
また、設計段階の本船について、海や海氷からどのくらいの力を受けるのか、現在想定している推進器や舵でしっかり運航できるのかなどを確認しておく必要があります。
これをどうやるかというと、実物大の実験模型を使って実際に海上で確認します!・・・というわけではありません。全長が130m近くになる本船は実物大の模型を作るにはいささか大き過ぎるので、精緻な縮尺模型を造り、屋内の水槽(造船所所有の船型試験水槽:長さ240m×幅18m×深さ8m、氷海水槽:長さ20m×幅6m×深さ1.8mなど)を用いて試験を行います。この縮尺模型の試験結果から実際の船の大きさとした場合の能力を推定していくことになるんです。
こちらは2022年1~6月に一通りの試験を済ませており、概ね問題無い結果が得られています。
今年いっぱいは、引き続き詳細事項の協議を進めます。
2023年に入った頃、詳細事項を反映した本船の3Dモデルを作成してもらい、いろいろな視点からの画像が見られる予定です。
今のところ平面の図の中にしか存在しない本船がどのように造られていくのか、これからが楽しみです。
サムネイルは旋回操舵試験にて撮影したもの。試験全体の動画はこちら。