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IRSO 2024に行ってみた

20241220

IRSO参加メンバー
(JAMSTEC北極域研究船推進部・株式会社商船三井 北極域研究船プロジェクトチーム)

昨年に引き続き、今年も世界各国の研究船運航者が集まる国際会議であるInternational Research Ship Operators (IRSO)の2024年総会に参加しましたので、その様子をご紹介します。
IRSOとは、前述の通り世界各国の研究船運航者が出席する国際的な会議体で、30カ国49団体(2024年時点)を代表する研究船運航者がメンバーとなっています。年1回の総会では、各自新造船の紹介や、運航に関する悩みなども赤裸々に発表し、関係者間で情報共有、意見交換を行い、連携を深めることを目的としています。 

今年は、116名が25ヶ国から参加し、カナダのバンクーバーにあるSimon Fraser大学の施設である、Morris J. Wosk Centre for Dialogueという立派なホールで開催されました。

写真①:まるで国連(?)

これまで何度か本会合に参加したことがありますが、このような円形状の会場、ましてや全席にマイクが付いているような会場は初めてです。会場に入るなり皆「ワオ」「国連みたい」と驚いていました。立派な会場で、発表する側の緊張感も高まります。 

本会合は9月24日~26日の3日間開催されましたが、本会合前日の23日には“Health, Welfare and Civility at Sea”(海上での健康、福祉、コンプライアンス)というテーマのワークショップが開催され、本会合終了の翌日27日にはOptional team building dayとして、Seaspan造船所での船の見学会が行われました。 

“Health, Welfare and Civility at Sea”のワークショップでは、テーマに沿って、労働時間、D & I(Diversity and Inclusion:多様性とその受入)、或いは、船上での心身の不調への対処等の幅広いトピックに沿ってプレゼンテーションやこれに対する質疑応答、実例の共有等の積極的なやり取りがなされました。労働環境としての研究船の特殊性が再認識されたとともに、研究船という環境をより良いものにしたい、という強い意識は参加者共通のものであると感じられました。バックグラウンドの異なる様々な人が乗船することはある意味研究船ならではの醍醐味とも言うべき特徴ですが、同時に、そのような場であればこそ高い意識を備え効果的な実践に取り組むべきであると感じました。ワークショップですっかり温まった雰囲気そのままに、夜にはIcebreaking dinnerが開かれました。Icebreaking dinnerは、今までに出会った方々との再会を喜び、近況を共有する時間であり、また、初めて参加する方々との新たなつながりが生まれる場でもあります。ディナーが終わるころには皆打ち解けて翌日からの本会合に向けて準備万端です。 

24日からの本会合では、3日間にわたり「各国報告」、「新造船」、「協力とアウトリーチ」、「コンプライアンス/法務/保険」、「企業プレゼンテーション」等の分野に関する47の発表が行われました。我々も「みらいⅡ」の建造状況や国際的な取り組み、現在の運航における課題などについて発表を行い、アメリカ国立科学財団(NSF)の新造砕氷研究船プロジェクトチームの方から、今後ぜひ連携していきましょう、とお声掛けいただくことが出来ました。
先住民との連携の取り組み事例や、環境影響を意識した取り組み、例えば、研究航海のカーボンフットプリントの排出量を評価できるシステムの構築などが、今回の会議では印象に残りました。国際海事機関(IMO)のCO2排出規制の影響で、ここ数年で研究船業界でも環境影響への取り組みがとても増えていると感じます。また、当然、カナダやアメリカの新造砕氷研究船の発表、オーストラリアの砕氷研究船Nuyinaの竣工後2年間のテストやトラブルの様子など、研究砕氷船に関する発表は特に興味深く聴講しました。注目のPolarsternの後継船については、口頭発表はありませんでしたが、イメージCGが記載されたポスターが掲示されていました。 

今回、会議中に提供される飲食も環境に配慮ということで、まず事前に水筒を持参するよう参加者に案内があり、ランチはビュッフェ形式(フードロス防止)で、さらにカトラリー類は再生素材で作られていました。
初日はパッタイなどのアジア系、2日目はケバブのラップなど中東系、といった風で、いわゆる普通の欧米のランチでは無く、国際色豊かなランチでした。

写真②:カトラリー類は再生素材
写真③:ケバブのラップ。付け合わせはフムスチップスでした。

27日にはバンクーバー市街地の対岸にあるSeaspanシップヤードで建造しているカナダ沿岸警備隊のOOSV(Offshore Oceanographic Science Vessel) CCGS Naalak Nappaaluk(長さ87.9m、幅17.6m、氷海船階級(ポーラークラス)PC6 )を見学しました。様々な観測設備(CTD、コアリングLARS、観測ウィンチなど)を装備する船になる予定ですが、見学時はまだ艤装の途中…天井は電線だらけ、内装もまだされていない状態。でもこういう姿が見られるのも建造中ならではです。2025年春引渡しということで、きっと「みらいⅡ」より1歳年上のお姉さんとして北極海で活躍するのでしょう!

写真④:艤装岸壁の様子
写真⑤:研究室になる予定のエリア

また、毎年参加者にはノベルティが配布されますが、今年はこのような感じでした。

写真⑥:IRSO 2024ノベルティ

IRSOと書かれた布のトートバッグ、「バンクーバー」と書かれたボールペンや除菌スプレー、メガネクリーナー、バンクーバーの地図、木製のカトラリーセットなどでした。木製のカトラリーセットにも環境保護への意識の高さが表れています。
ちなみに、写真にも写っている「The Lemon Square」と書かれた茶色い紙に包まれた正方形の物体、実際はレモンケーキなのですが、石鹸だと勘違いする方が出たようで、2日目に事務局から「これはケーキです」と案内がありました。それを受けて議長が「今朝シャワーの時に使っちゃったよ!」とすかさず発言して爆笑をさらっていました。

今回、主にオーストラリアやドイツなど他国の砕氷研究船の関係者の方たちと、「今後も連携していきましょう」「情報共有をしましょう」、というようなお話をさせて頂くことも出来ました。ここで培った繋がりを活かしながら、今後、「みらいⅡ」を国際的な研究プラットフォームとして運用できるよう、建造と運用準備を進めていきたいと思います。

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