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「北極域研究船の建造状況 Ⅲ」~北極域研究船「みらいⅡ」模型審議~

2024628

北極域研究船推進部 建造チーム

 こんにちは、北極域研究船建造チームです。
 建造チーム発のブログ記事は2024年2月以来となります。
 建造チームではこれまで、船体各所の設計や観測機器・設備等の仕様、それらの運用方法について検討を進めてまいりました。先月のブログ記事や一般公開でご案内したように船体各所の大まかな配置が定まってきましたので、本船の縮尺模型を使用した「模型審議」を実施いたしました。場所は、本船の建造現場であるジャパン マリンユナイテッド(JMU)横浜事業所磯子工場内で、我々建造チームやJMUほか本船の関係者が参加し、2日間にわたって実施いたしました。今回は、その内容をご報告いたします。

 今回使用した模型は、1/25スケールのアクリル樹脂製で、本船の観測区画である「観測甲板」「CTD・ムーンプール区画」「ウィンチ室」「ヘリ甲板」「第1観測器材倉庫」が再現されています。Aフレームクレーンや中折れ式クレーンは可動式で、本船の特徴の一つでもある「CTD LARS(採水器着揚収装置)」は、右舷船内から船外へ引き出すことも可能です。(模型愛好家の心をくすぐる仕様が満載でした!)

観測甲板全景:クレーン類はすべて可動します。念のため補足しますが、実際の船体はこのような純白ではありません…。

CTD LARS(採水器着揚収装置):天井レールの走行動作、ブーム伸縮も再現されています。

 模型は極めて精巧に製作されており、これまではデジタルデータや紙面で確認していたものが立体的に再現されると、模型とはいえ本船の建造がここまで進んできたことを実感することができました。模型は船体だけでなく、船上で運用される観測機器・設備や作業員も同スケールで再現されています。模型審議では実際の運用を想定してこれらを配置し、不具合がないか、改善できるポイントはないかなど、確認・検討いたしました。

観測装置類:さすがに個々の機器や装置までは細かく再現できないため、サイズのみを正確にした簡易的な立法体としています(一般公開とかで工作コーナーができそう…?)。どれがどの機器や設備を表しているのか分かるでしょうか?おなじみのCTD採水装置、TRITONブイもあります!

作業者(身長175㎝相当):この中から作業指揮者役や操作担当役などを分類し、色を塗ったりしました。

 審議1日目は、各観測機器・設備の運用手順について、これまでの設計・配置で実施することに支障が無いか確認を行いました。特にAフレームクレーンを使用するような大規模な作業は、準備場所、着揚収時に使用するロープの位置、作業者の立ち位置など、安全に支障なく実施することができるか入念に確認いたしました。実際にクレーンなどを動かしてみると、より具体的に船上での運用イメージを把握することができ、関係者全員で非常に建設的な議論を行うことができました。

観測装置と人員の配置確認:こちらは曳航式の調査機である「ディープ・トウ」の投入配置確認です。

 2日目は、静止画である2D図面や3Dモデルで確認することが難しかった、様々な観測装置を船上で次々と取り換えながら連続して運用することを想定した機材配置や取り回し、その手順をシミュレーションしました。
 研究航海では、限られた航海日数を最大限に活用するため、観測作業と他の観測準備を並行して実施するなど効率的な観測活動を追求することになります。例えば、係留系の観測センサーやワイヤーなどの回収と片付けを行いながら、採泥装置の準備を行う、といった具合です。今回の審議では、機材をいつどのように配置するかなど、船上という限られたスペースを有効活用し、安全かつ効率的に作業を行うため、様々な組み合わせを検証しました。
 さらに、研究航海では多くの資機材を搭載するため、本船に3か所用意される倉庫への機材の保管方法と配置案、機材を固定するための設備の確認も行いました。1日目と同様に、2日目も活発に議論を交わすことができました。

第2、第3観測器材倉庫内の配置検討:研究航海では非常に多くの機材を搭載します。ちゃんと収納できるかな…?

 今回の模型審議では、これまで机上で検討を進めてきた観測装置の運用手順について、実際に物を動かし、再現したからこその発見があり、より良い運用方法の提案や、改善すべき課題が見つかるなど非常に有意義な機会となりました。
 本船の建造は、現在、船体構造(ブロック)の加工・組み立てを進めており、本年9月以降は工場内ドックにおいてそれらのブロックを積み重ね、来年3月には進水を予定しています。まさに、船の誕生において重要な工程を迎えています。これから生まれてくる新しい船を心待ちにしつつ、今回の審議結果を踏まえ、関係者一丸となって北極域研究船「みらいⅡ」の建造と運用準備に取り組んで参ります。
みなさまには、引き続きの応援をよろしくお願いいたします!
それでは、また次回のブログもお楽しみに!

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