北極の研究と船について学べる教材作りました!
2025年5月27日
海洋科学技術戦略部
海洋STEAM推進課
みなさん、はじめまして。JAMSTECの海洋STEAM推進課です。
突然現れた海洋STEAM推進課とは何?!と思った方も多いかと思いますので、まずは自己紹介からさせて頂きます。
私たち海洋STEAM推進課は、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習手法である「STEAM教育」を通じて、次世代の海洋人材を育成していくために令和5年度から「海洋STEAM事業」に取り組んでいます。
どんなことをしているのか、気になった方は是非こちら(https://www.jamstec.go.jp/steam/)をご覧ください。
この海洋STEAM事業の取り組みの一つとして「学校の授業で使える学習指導要領に沿ったSTEAM教材を作る」ことを行っています。
先ほど記載したとおり、STEAM教育は「各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習手法」ですので、JAMSTECが取り組む海洋を中心とした研究とSTEAM教育はとても相性が良く、これまでに「海の生き物と環境の変化」、「海洋プラスチックと私たちの生活」、「海の地震と防災 海底下の地層」の3つのテーマで教材を作ってきました。
この北極域研究船プロジェクトブログでも、北極海での観測研究や「みらいⅡ」の建造過程など広くご紹介してきたと思います。我々海洋STEAM推進課のメンバーももちろんこのブログを読んでおり、これらの素材から素晴らしい教材が料理できるのではないかと考え、造船所など関係機関の方々のお力添えや、北極域研究船推進部をはじめとするJAMSTEC関係部署の協力を得て、この度、「北極の研究と船」というテーマで海洋STEAM教材を制作することができました。

海洋STEAM教材第5巻「北極の研究と船」のテキスト表紙
この教材は、全部で以下の6つの小テーマから構成されています。
第1章:北極とは
第2章:北極の環境変化とその影響
第3章:北極の研究と船
第4章:北極域研究船の建造
第5章:北極域研究船での調査研究
第6章:北極研究の未来
学習者には、これらの小テーマから、知っていそうで知らない北極のことや、その北極で起きている環境の変化、これまで北極で行われてきた観測や研究について学んでいただき、北極を調べることの意義や重要性を理解していただきます。
そのうえで、現在建造中の氷海域での観測活動が可能な砕氷機能を有する「みらいⅡ」を活用し、学習者であれば北極でどのような観測・調査を行うのか、最後に研究計画を立案していただく内容となっています。テキスト内には、各小テーマに関連する参考サイトや動画のURL、QRコードも掲載しており、学習者は参考サイトも見ながら学びを深めていくことができます。


テキストは写真や図が豊富に掲載されていて、視覚的にも理解しやすい内容となっている。
さらに、小テーマを補足する付録として、砕氷機能とは何かを学べるコラムや、「みらいⅡ」についてより詳しく知ることができる情報を集約したページもあります。また、巻末には、教材の中に出てくる専門用語について解説する用語集もつけました。
特にコラムについては、「みらいⅡ」の造船所であるジャパン マリンユナイテッド株式会社の技術研究所にご執筆いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。


巻末には「みらいⅡ」関連のウェブサイトやYouTube動画のリンクを掲載しているページや用語集が掲載されている。
テキストだけでなく、ワークシートにも工夫があります。こちらのワークシートの例をご覧頂くと分かるとおり、各設問(タスク)への回答欄は広く確保しており、学習者がそれぞれ自分なりの表現方法で考えをまとめることができるようにしています。文章でまとめても良いですし、箇条書きやイラスト等で考えをまとめることもできます。

ワークシートは、自由に記載しやすい様式となっている。
また、学校の授業で先生が取り入れやすくするために、授業計画を作成する際の参考になる「指導書」や、授業を行う際のアドバイスやワークシートの回答例等が記載された「朱書編」も作成しています。この指導書や朱書編に記載されているとおりに授業を行うことも可能ですし、これらに記載されていることを参考に、先生が使いたい部分のみを抜粋して授業を組み立てることも可能となっています。


朱書編や指導書には評価規準や回答例等も記載されている。
基本的には、総合的な学習の時間や探究学習の時間で活用して頂くことを想定していますが、個別教科の授業の一環でも活用可能なように、テキストの内容が学習指導要領のどの教科のどの単元と関連があるかを記載する「学習指導要領対応マップ」と「カリキュラムスケジュール」も準備しています。活用してみたいけど、どのタイミングで活用したらよいか悩む場合は、これらを参考にしてご検討いただければ幸いです。


学習指導要領対応マップには、対応する教科と単元が記載されている他、カリキュラムスケジュールは年間のスケジュールの各教科の導入がしやすい時期等も記載されている。
これらの教材は以下のサイトからダウンロードが可能となっています。
主に学校の先生方に活用していただくことを想定していますが、北極について学んでみたい!とお考えの方はどなたでもご活用いただけます。
海洋STEAM教材ライブラリー https://www.jamstec.go.jp/steam/material/
日本は、北極海に面してはいません。でも北極で起きていることは私たちの生活にも大きく影響し始めています。この教材を通じて、生徒の皆さんや先生方にも、北極のこと、北極での観測や調査が大事であること、更には北極を始めとする海や地球環境について考えてみようと思ってもらえると嬉しいです。