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プチ解説①「みらいⅡの巨大な魔法瓶~LNG燃料タンク~」

20241213

北極域研究船推進部 建造チーム

 こんにちは、北極域研究船推進部 建造チームです。

 Xでポスト、ギャラリーにも掲載しているLNG燃料タンクについて、ブログにて補足説明させていただこうと思います(プチ解説②以降があるかは現時点で未定。。。)。

 これまでブログなどでも触れさせていただいていますが、本船の主機関4台のうち1台は通常のディーゼル燃料に加えてLNG燃料も使用可能な2元燃料(デュアルフューエル)エンジンとなっています。

 そのため燃料タンクもディーゼル油・LNGで別々に補給・貯蔵する必要がありますが、LNGは超低温(マイナス162℃)を保持する必要がありますので特別なタンクが必要になります。下記写真のうち円筒形の部分がタンク本体にあたります。ちなみに普通の船舶燃料(いわゆる油)は船の区画の一部をタンクスペースとして利用していますので、このような独立のタンクではありません。

写真①:タンク側からのアングル

 タンクは長さ約16m、外径約6m、重量(後述のTCS込み)約180tであり、エア・ウォーターが製造した真空断熱式の舶用LNG燃料タンクとしては過去最大とのことです。

 このタンクの真空断熱式とは、原理としては多くの皆さんもお持ちの魔法瓶タイプの水筒やタンブラーと同じです。見ようによっては、皆さんと同じように「みらいⅡ」も水筒から飲み物を飲む(燃料を使う)とも言えるかもしれません。外に見えているタンク(外槽)とその内側にLNG燃料(水筒だと飲み物)を入れる別のタンク(内槽)があり、この間のスペースを真空にすることで、熱伝導率を低下させる仕組みです(空気の分子がエネルギーとして熱を伝達しますが、この空気がほとんどなくなるので熱が伝わらなくなります)。ただし、水筒のサイズと産業用のタンクではサイズが大きく違うので、真空にするために排出しないといけない空気の量も全く異なり、ただ空気を排出するだけで同じ真空度にするのは難易度が異なります。そのため排出する空気の量を減らすためと、断熱性が維持されるのに必要な真空度を下げるために、真空スペースに断熱性能が高い充填剤を入れているのが大きな違いです。

  タンクに付属している四角形の部分はTCS(タンクコネクションスペース)という、LNGを気化し燃料として主機関へ送るための装置(FGSS/Fuel Gas Supply System)が納められている、ガス燃料にとっての心臓部となります。

写真②:TCS側からのアングル

 ガスを気化する必要があることから危険性が高く、内部は高度な防爆対応(ガスに引火しないような特殊な対応)が施された機器で設計されています。この装置に不具合が起きるとガス燃料が供給できなくなってしまうため、非常に重要な装置です。そのため、四角形の中には各種機器が所狭しと配置されており、皆様にもぜひ見ていただきたいでところですが、機器の性質などから公開は難しいところです(船内に解説パネルなどを掲示することも検討中)。しかし何とも大掛かりな魔法瓶ですね。。。

 このタンク一式の製造は最終工程にさしかかっており、JMU磯子工場には2025年1月中旬に搬入、「みらいⅡ」への搭載は同1月下旬を予定しています。引き続き順調に製造が進むことを祈るばかりです。

 タンクの外観は今後の一般公開などでお見せできると思いますので、興味があればぜひ巨大な魔法瓶をご覧ください。

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