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むつ研究所一般公開の予習にも最適!? 横須賀本部一般公開2025 開催ご報告(Q&Aもあります)

2025716

北極域研究船推進部
広報チーム

みなさんこんにちは、北極域研究船推進部 広報チームです。 

JAMSTECの研究開発活動について、実際に現場を見て、ふれて、楽しみながら、みなさまにわかりやすくお伝えすることを目的として、毎年横須賀本部の施設一般公開を実施しています。
2025年は5月17日(土)に開催しました。開催当日は、あいにくの強風&大雨(感覚的には台風)となりましたが、そのような過酷な天候の中、お越しいただいた3,096名のみなさまには改めて御礼申し上げます。

本ブログでは、当部メンバーが出演した「JAMSTEC BASE CAMP 2025」のライブ配信企画や、展示ブース「北極域研究船「みらいⅡ」のことを知ろう!2025」をご紹介します。
当日お越しいただけなかった方はもちろんのこと、ご来場いただいた方にもぜひご一読いただき、振り返っていただければ幸いです。

まずご紹介するのは、「JAMSTEC BASE CAMP 2025 海と地球を調べよう✨スペシャル」というライブ配信企画のトップバッタープログラムとなった「いよいよ姿が見えてきた!「みらいⅡ」スペシャルトーク」です。
北極域研究船推進部建造チーム(とJAMSTECの誰か)が出演し、展示ブースから直接ライブ配信しました。会場の熱気をそのままにご来場のみなさまが見守る中、「みらいⅡ」の1/100スケール模型などを活用しながら、視聴者参加型のクイズも交えて「みらいⅡ」をご紹介しました。また、2025年3月の命名・進水式の映像はもちろんのこと、建造中のリアルな現場の様子、進水後艤装岸壁の様子など、建造現場で担当者が撮影してきた映像も豊富にご紹介させていただきましたが、お楽しみいただけましたなら幸いです。

☝展示ブースからのライブ配信中の様子
ウェブサイトからライブ配信のアーカイブもご覧いただけますので、ぜひご覧ください。
2025年5月17日 JAMSTEC 横須賀本部 施設一般公開
https://www.jamstec.go.jp/j/pr-event/public-open-yokosuka2025/

当日の展示ブースの様子はといいますと、大変多くの方にご来場いただき、大盛況となりました!

ここから、今回の一般公開から登場した新コンテンツを中心にご紹介します。

①「みらいⅡ」の最新1/100スケール模型初公開

これまでは初期コンセプトデザイン時の1/100スケール模型を展示していましたが、今回新たに(ほぼ)最終デザインの1/100スケール模型を製作し初公開しました。
会場のスペース上、コンセプトデザイン模型と並べて展示することはできなかったため、当時のCGと並べて展示し、違いを探していただきました(特にお子さまに好評)。
本ブログでは、当日叶わなかった模型同士の写真を並べてみます。ぜひどこが変わったのか探してみてください!

「みらいⅡ」(ほぼ)最終デザインの1/100スケール模型
初期コンセプトデザインの1/100スケール模型

上部構造物がかなり精巧なできばえとなり、大きく印象が変わりました。
船首、中央、船尾のクレーンやヘリコプターデッキに注目いただくと違いが見つかりやすいかもしれません。見れば見るほど、その他細かい部分の違いも見えてくるかと思います。

②「みらいⅡと行こう!北極調査隊」展示コーナー設置

「みらいⅡと行こう!北極調査隊」に関連した展示コーナーを設けました。
真ん中に見えるみらいつーちゃんの自立型パネル(「みらいⅡ」は全長128mですが、本パネルは全長約128cm)を中心に、左手には北極調査隊コンテンツのご紹介、調査隊キッズメンバーの一人が作成した「新聞」原稿(2024年度 ジュニアシッピングジャーナリスト小学生部門優秀賞受賞!)、右手にはキャストのサイン、つーちゃんのイラスト集などを展示しました。

最新話「特別調査その1」も好評公開中の「みらいⅡと行こう!北極調査隊」の詳細については、以下特設サイトをご覧ください。https://www.jamstec.go.jp/parv/j/event/hokkyokuchousatai.html

制作小話ブログも掲載しておりますので、併せてご覧ください。
https://www.jamstec.go.jp/parv/j/blog/20250603.html

☟中央左寄りには、船舶専門のイラストレーター PUNIP cruises 中村 辰美さんの原画も展示しました。このイラストにタイトルを付けるとしたら、「海氷を越えて」あるいは「海氷の向こう側へ」とかでしょうか。

③「みらいⅡ」の支綱切断斧(と同型の斧)の展示

様々な媒体で既報のとおり、3月19日(水)に、ジャパン マリンユナイテッド株式会社(JMU)横浜事業所磯子工場において、愛子内親王殿下の御臨席を賜り、命名・進水式が執り行われました。命名・進水式では、愛子内親王殿下に支綱をご切断いただきましたが、実際に使用されたものと同型の斧を展示しました。 

ご参考「北極域研究船「みらいⅡ」命名・進水式が執り行われました」
https://www.jamstec.go.jp/j/jamstec_news/20250319/ 

そのほかにも、今回の一般公開で初めての販売となった「みらいⅡ」御船印(https://gosen-in.jp/member_detail.php?id=141)をご紹介したり、「みらいⅡ」ロゴステッカーやパンフレット、関係事業社のパンフレットの配付なども行いました。

 これらは昨年に引き続きの展示内容です。
〇3Dの船殻モデル(船の骨格・外郭を3Dで表した画像データ)の展示
〇一般配置図(船の設計図)の展示
ご参考「JAMSTEC横須賀本部 施設一般公開2024 開催のご報告」

今回もかなり盛りだくさんの展示となりましたので、北極域研究船推進部のスタッフほぼ総出で臨みました。

お客さまが真剣かつ興味深げに展示をご覧になり、疑問に感じたことなどご質問をいただき、お話をさせていただく中で、「みらいⅡ」への応援や期待のお言葉も多く頂戴し、たくさんのパワーをいただくことが出来ました。「みらいⅡ」展示ブースにお立ち寄り頂いたみなさま、誠にありがとうございました!

さて、この場をお借りしまして、当日お寄せいただいた(あるいはよく頂戴する)ご質問にお答えいたします。 

Q.「みらいⅡ」はどのように氷を割りながら航行するのですか?
A.頑丈な船体とパワフルな推進力(電気推進)に加え、氷を割るのに適した船首形状(一般の船と違い水面下を含め大きく傾斜している)を有しており、進むことで船首から氷に下向きの力が加えられます。これにより氷を押し割りながら進んでいくことができます。


詳細は「北極の研究と船について学べる教材作りました!」でも紹介している海洋STEAM教材第5巻「北極の研究と船」のテキスト教材もご覧ください。

Q.ムーンプールとはなんですか?
A.船上から船底までを貫通する、約4m四方の穴状の構造です。通常、船の側面や船尾から着揚収を行う観測機器について、このムーンプールから観測機器の着揚収を行うことで、海氷に覆われた海域でも安定した観測を行うことが期待できます。

Q.アジマススラスターとはなんですか?
A. 360度自由自在に旋回するスラスターで、船首と船尾に一基ずつ搭載されています。普段は船内に格納しておき、観測作業などで船を一定の場所に留めておきたいときに展開(降下)し使用します。
「みらいⅡ」最終デザインの1/100スケール模型写真の船底(船首・船尾)をご覧いただき、見つけてみてください!

Q.居室はどのようになっていますか?
A.乗船者は全室個室で、机、ベッドなどの家具・家電類、シャワーとトイレが備わっています。ビジネスホテルの1室を少し小さくしたようなイメージです。ただし、乗船者の中でも首席研究員部屋など一部は、打合せスペースなど業務上の必要から一般の乗船者より広めの部屋となっています。

Q.「みらいⅡ」という船名の命名理由は?(←船名に応募していただいた方から多く頂戴いたしました。)
A.船名は、2023年7月28日(金)~2023年10月20日(金)の間に実施した一般公募の結果(一定数の応募があったなど)や外部有識者のご意見を参考に検討した結果、本船が、JAMSTECが現在運用する海洋地球研究船「みらい」から北極域を含む調査・観測活動を引き継ぐ予定であること、これまで「みらい」で培われた海洋地球観測に係る国際的な貢献・認知度からの継続性、さらには、本船が、北極域、ひいては地球環境全体の「未来」への貢献を目指すことから決定しました。「Ⅱ」によって、国際研究プラットフォームといった新たなコンセプトや砕氷能力などを持つ本船と区別しています。
なお、船名募集で多数ご応募いただいた「しろくま」を本船に搭載する作業艇の、同じく「ほくと」を本船に搭載する3,000m級無人探査機の愛称とし、さらに「ほくと」から連想される北斗七星を、本船のロゴマークデザインに取り入れるなど、船名公募の結果を最大限活用させていただいております。

作業艇「しろくま」
出典 https://www.viking-life.com/shop/boats-and-davits/boats/fast-rescue-boats/viking-norsafe-magnum-750-mkii-frc-inboard-diesel-engine-waterjet-propulsion/  


搭載予定の無人探査機「ほくと」(3,000m級)
出典 https://f-e-t.com/subsea/vehicles/observation-class-rovs/

北斗七星を取り入れた北極域研究船「みらいⅡ」ロゴマーク
ご参考「北極域研究船の船名決定について」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20240222/

Q.海洋地球研究船「みらい」の運用はいつまでですか?
A. 「みらい」は、1995年に原子力船「むつ」の船体を切断の上、原子炉が一括撤去され、1996年8月に通常のディーゼル機関を搭載し、世界的にも稀な大型の研究船として誕生した船です。
そこから30年近く、「みらい」の広域かつ長期にわたる調査・観測が可能な優れた耐氷性及び航行性を生かし、これまで世界各地における海洋の熱循環・物質循環、生態系、環境変動等の研究の調査・観測を担ってきましたが、この度老朽化等に鑑み、2025年度をもって運用停止が決定いたしました。
なお、「みらい」の後を引き継ぐ「みらいⅡ」は、現時点で2026年11月の引渡を予定しており、各種訓練などを実施したのち、2027年夏に初の北極海観測航海を実施する予定です。

海洋地球研究船「みらい」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/mirai.html

Q.「みらい」退役から「みらいⅡ」の運用開始までの空白期間が1年ほどある理由は?
A.「みらい」の停止時期については、JAMSTECの中長期計画期間(現計画期間は2025年度末まで)の区切りとの兼ね合いや「みらい」の定期検査(5年ごとの大掛かりな検査工事)のタイミングとの兼ね合いなどから総合的に勘案し判断されたものです。他方、「みらいⅡ」側の建造期間の確保の必要から「みらい」の停船に噛み合わず、結果的に1年程度の空白が生じることとなりました。

Q.「みらいⅡ」の船籍港は?
A.「みらい」の船籍港から引き続き青森県むつ市(関根浜港)です。

Q.「みらいⅡ」は現在どこにあり、どのような作業をしていますか?
A.2025年3月の進水以降、建造ドックから工場内の艤装岸壁に移動し、係留しています。艤装工事として、船内の電線等の敷設、内装、分析装置・機器の搭載などを進めています。2026年6月ごろから複数回の海上公試(実際に海上で運転し、性能を確認する試験)を実施し、2026年11月に引き渡される予定です。

Q.「みらいⅡ」引渡後の予定は?
A.現時点では、氷海域を含む補給、操船や各種観測機器・設備の作動確認・トレーニングなど行う慣熟航海を実施し、その後の2027年夏ごろに「みらいⅡ」による初の北極海観測航海を予定しています。慣熟航海の内容については、決まりしだい別途公表する予定です。

Q.北極に到達するまで何日かかりますか?
A.「みらい」の場合、北極海に入るまで、日本から片道11日程度です。「みらいⅡ」も同じぐらいを想定しています。

Q.1回の乗船期間は何日ですか?
A.無寄港で連続最長45日程度です。観測航海の内容や期間によっては、途中で寄港し、補給や乗船者の交代などを行います。

Q.南極海も航行可能ですか?
A.砕氷船という意味では特に南北関係ありませんので、「みらいⅡ」の砕氷能力の範囲内であれば、南極海の海氷域も航行可能です。

Q.南極観測船「しらせ」とは何が違いますか?
A.「しらせ」の大きなミッションとして、南極昭和基地への物資や観測隊員の輸送がありますが、「みらいⅡ」にそのような任務は想定されていませんので、船の設計思想が異なっています。「みらいⅡ」は、オールラウンドな研究船をコンセプトとして、大気・気象・海洋・海氷を観測可能な多数の観測機器・設備や船内研究室を充実させています。

さて、本稿でご紹介したコンテンツの一部は、7月20日に開催予定の「むつ研究所一般公開」でも展示予定ですので、ぜひそちらにもお越しください! 

2026年11月の引渡を目指し、その後の運用に円滑に移行するため、「みらいⅡ」の建造および運用準備を進めて参りますので、その様子は引き続きこちらのWebサイトやSNS等でお伝えしていきます。ぜひ進捗を見守っていただければ幸いです。
これからも「みらいⅡ」の応援をどうぞよろしくお願いいたします!

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